城里町上下水道課では、令和7年7月に、専門学校文化デザイナー学院と横浜ウォーター株式会社と連携して、国土交通省事業「水道事業の啓発に向けた調査検討及びセミナー企画運営業務(以下「セミナー事業」)」に参画しました。セミナー事業には、昨年度に続き2年連続での参画です。
「水道」の啓発事業、2年連続で参画する意義とは?
セミナー事業は、産官学連携で実施する「水道事業の啓発」を目的とした事業で、令和6年度に初めて公募されました。
本年度が2年目となる、始まったばかりの取り組みです。
「水道事業」について、
・未来を担う若年層自身に、現状を知り理解を深めてもらうこと、
・将来あるべき水道の姿を同世代の若者たちに向けて発信してもらうこと、
を目指して、本年度も全4回のセミナーを開催しました。
本年度、セミナー事業に御協力いただいた学校は、専門学校文化デザイナー学院。デザインの専門学校です。
昨年度の取り組みで、若者たちから挙がった同世代への「メッセージ」は、若年層ならではの視点で紡がれており、
かつ、水道事業への関心の深化がうかがえる充実した内容でした。
一方で、その「メッセージ」を具体的にどのように発信していくのかは、行政側の課題となっていました。
せっかくの若年層からの貴重な提案を、より「若者」に浸透しやすい方法で発信する方法はないものか。
そこで思い当たったのが、「発信の手法」まで若年層に考えてもらう、ということでした。
「デザイン」を学ぶ学生の皆様に御協力いただき、デザイナーならではの目線を活かして、
言葉として伝えたい「メッセージ」を超え、その「発信手法」の企画提案まで行っていただくことで、
より若者にとって魅力的な広報となるのではないか、と考えました。
まずは「知る」、そして「考える」、「共有する」。その先の「伝えようとする」へ。
参加してくれた学生のみなさんは、地域デザインゼミに所属している専門学校文化デザイナー学院の3年生、17名。
テーマを“デザイナーの目線でみる、将来の「水道」”とし、令和7年7月3日から24日までの木曜日に開催しました。
セミナーの前半は、昨年度同様、まずは「水道」についての知識をインプットしていきました。
「水道の歴史」や、日常生活であまり意識することのない、「水道事業の経営」や「水道事業の課題」についてなど、
水道や水道事業のことを幅広く学習しました。
自己紹介では「水道についてはわからない」と話していたものの、講義後の質疑の時間には、次々と質問が出ていました。
知識をインプットしたら、学んだことを踏まえ、水道事業の将来について考えていきます。
昨年度はワークショップ形式で、学生同士が直接対話して意見交換をしていましたが、
本年度は「オンライン上のドキュメント」を使って、各々が考えたことを書き込んでいきました。
お互いの書き込みを見ながら、考え方や、やってみたい「発信の手法」が似ている学生同士が集まって、
4~5人でグループを形成していきました。
まだ完全には固まっていないながらも「このような発信がよさそう」と考え、グループである程度手法を話し合った上で、
第2回の現地見学に臨みます。
しっかり知識を得てから「アウトプット」を行うことはもちろん重要なことですが、「どう発信したいのか」を考えながら
インプットを行うことは、「関心を持った部分により注意を向けて学ぶ」機会ともなりうると感じました。

▲知識をもとに、グループごとに発信手法を話し合う。 ▲伝えたいメッセージは何か、知識を整理して考える。
「相手に伝えたい」という気持ちの大切さ
今回、セミナーを受講した学生は「地域デザインゼミ」の所属で普段は「デザイン」を学んでいます。
セミナー初回の自己紹介では、「水道はわからないのですが、」と話してくれた学生さんがたくさんいましたが、最終回のプレゼンテーションでは、「水がきれいになるまで」や「水道事業の経営」を理解した提案が次々と発案され、1か月という短い時間の間に、受講学生たちの水道に関する知識が飛躍的に深まっていることを実感しました。
セミナーを通して、「水道」について知っていくことで、「無関心」から「気になるもの」へと変わっていったことはもちろんですが、誰かに「伝わる」ことを意識して、企画を考える過程が、より学ぶ意欲や関心を高め、知識を深めることに繋がっていったと感じています。
具体的に、
・「水」の一粒なりきり、「水」の視点で浄水過程を学べるイベントの開催
・余剰分の「水」を活用した化粧品の製作販売
・廃管を使った灯篭アート
・水道事業について学べるボードゲーム
など、
魅力あふれる案が挙がっていました。

▲ボードゲームで水道を知ってもらう企画。 ▲自分が「水」になりきるイベントを企画。
「城里町水道事業」の関わり方
城里町上下水道課は、昨年度より引き続き水道に関する情報発信強化の一環として本事業に参画し、横浜ウォーター株式会社と協力してセミナーを運営しました。メッセージや発信手法を考えるにあたり、第1回目で形成した班での活動が主となっていたことから、本年度は、それぞれの班を少しずつ訪問し、不足している知識や情報を埋める手助けや、同世代へ向けた「メッセージ」や「発信の手法」の考え方のヒントを提示するなど、ちょっとした補助を行いました。これからの未来を担う世代の意見を直接聞く機会という意味でも、デザイナーの目線でみる「発信の手法」が作り上げられていく過程を見る機会という意味でも、町の職員にとっても貴重な体験でした。
また、第2回目のセミナーでは、水道施設を実際に見て体感して学んでもらう場として、「石塚浄水場」での見学会と、城里町の浄水場でつくった水とミネラルウォーターの飲み比べを行う「利き水体験」を実施。小学校ぶりの浄水場見学で、文字や資料だけではわからない「水道事業の今」を感じてもらう機会となりました。
そして、第4回目では、「横浜ウォーター株式会社」と「城里町水道事業」に向けての企画提案をいただき、講評を行いました。どの提案もすばらしく、「若者ならでは」の視点を感じるものばかりでした。

▲現地訪問回!石塚浄水場の配水ポンプを見学中! ▲利き水体験!水の味の違い、わかりましたか?
職員所感 ~デザインを学ぶ学生とのセミナー事業への参画で感じたこと~
昨年同様、セミナーを通して、「関心がなかったこと」が「知っていること」、「気になること」になっていく過程を見せてもらうことができたことはもちろん、「伝えたい」という「誰かへの共有」を意識することの力を感じた経験でした。
「水道や水道事業について知ってほしい」と考えるとき、どうしてもあれもこれも伝えなくては、とつい考えてしまいます。
しかしながら一度にたくさんの情報を提示する方法ばかりでなく、少し知識を得たら、「誰かに伝える」ということを意識して考える時間を持つことも、重要なのだと気づかされました。
「知識を得る機会」や「実際に体験してもらう機会」、「直接意見を交わす機会」はもちろん重要ですが、「意見を交わす」際に「相手」を見て、伝えようとすることで「自分の考え」が整理されていくのであれば、「どうしたら伝わるのか」を考えることも、十分関心の
深化に影響してくるのだと思います。
「水道」に興味をもってもらうための「機会づくり」。
今回提案いただいた企画は、どれも大変興味深く、これからの城里町水道事業の広報活動に、ぜひ活用したいと考えています。
その際に、「誰かに伝えたい」と感じてもらえることで、より、水道に興味を持ってもらえる機会や可能性が生まれていくのではないかと感じました。
関連する取り組み
城里町上下水道課では、セミナー事業など、これまでの取り組みで得た気づきや経験を基に、令和7年8月「城里町水道サポーター」を始動しました。
城里町上下水道お客様センターを運営している「大崎データテック株式会社」と連携して行う「官民連携」型のサポーター制度です。
公募により選定された、20代から70代までの城里町在住者17名が初代のサポーターになってくれました。
本年度中に5回の活動を予定しており、活動は一部を除き傍聴を受け入れて行う予定です。
※城里町水道サポーターについては、別の記事に掲載しております。ぜひご覧ください!