誕生35周年記念 桂村勢要覧 1992(平成2)年 12月
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粟野春慶塗 五百年の伝統を守る 室町時代の中期延徳元年(一四八九)に、 稲川山城守源義明が現在の種村粟で始めたと 伝えられる粟野春慶塗は、日本でも最も古い 歴史を持つ春慶塗として知られています。春 慶塗とは各物に透明な漆を塗って、木目を透 かして美しく見せる技法のことで、以前は「春 慶塗の里」とされるほどに多くの職人がいま したが、プラスチック製品などの普及におされ、 現在では十九代目の稲川武男さんと平成元年 の春より始めた長男の義一さんの二人だけで 春慶塗の伝統技法を守り伝えています。 製品は、日常生活用具のお盆、重箱、行番 など。原材料の漆は大子、槍材は御前山から 七会の山林に成育する槍のなかでも一番堅い 石檜(イシッピ)の板を最高品として利用し ていますが、最近は漆を掻く人も加工に最適な 椅も少なくなっています。それだけに「乱造 乱売はしたくないから」と、かたくなに質の 良さを追求し、手問を惜しまずにじっくりと 仕上げていきます。 ■ ■ 木目も美しい粟野春慶塗 24

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