広報かつら No.319 1996(平成8)年 12月
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で数多くの出版物や記 事、講演、テレビ番組 などが企画されていま す。 脳の発達と深い関係 があるのは事実ですが それら出版物や番組 では、頭を良くする食 事としてどのような栄 養素が取り上げられて いるのでしょうか。 例えば、ア、、、ノ酸の 一種で脳の代謝に効果 的といわれる 「グルタ ミン酸」食、魚の脂肪 に多く含まれているD HA (ドコサヘキサエ ン酸) やEPA (エイコサペン タエン酸) などの 「脂肪酸」、あ るいは初乳 (分娩後数日間、乳 腺から分泌される水のような透 長寿の食事と同様、多くの人に とって魅力的なテーマです。こ れまでにも、この種のタイトル 「頭を良くする食事」 は、不老 頚を長くする食事とは この命題に明確な答えを出す には、さまざまな研究の成果が 待たれます。現在、脳の生理化 明の液) に多く含まれる 「タウ リン」などです。 これらの成分が脳の発達に深 くかかわっていることば、疑い のない事実です。しかし、 栄養摂取の面からみると、 解明されていない点がい くつかあります。特定の 物質に偏った栄養のとり 方は過剰栄養症という弊 害を招くことが、動物実 験を含め報告されていま す。頭に良いとされる栄 養素のうちどれを、いつ、 どのくらい摂取するのが 効果的なのか、これらの 確実な情報はあまりない のが現状です。では一体、 頭を良くする究極の栄養 とは何なのでしょうか。 脳の発育にはバランスの とれた書か大事 学としての認識、記憶、意識、 思考に関する基礎研究が盛んに 行われています。 ここでは、中川八郎・大阪大 学名誉教授が、米国の小児精神 科医であるキース・コナーズ博 士の著書「FEEDING O F BRAIN」 から紹介して いる興味深い研究結果を挙げて みます。それによると ①規則正しい朝食の摂取が子ど もの脳の発達には大切である ②離乳後期である生後九か月以 降の食事の中心が乳汁のみで は鉄分の不足となり、脳の発 達に深刻な影響を与える ③糖分の過剰摂取は脳の活動に 興奮を高め過ぎ、行動や情動 を不安定にする可能性がある などです。 このような研究内容を考え合 わせると、特定の栄養素をただ 単純に多くとるだけでは頭は良 くならないということです。健 康な脳の発達には健康な食生活、 つまり、栄養素のバランスのと れた食事を一目三回、適量 (腹 八分目) とるのが最もよいとい えるのです。 (6)

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