広報じょうほく No.391 1994(平成6)年 10月
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クレフシの山は常北町に近 く、今の水戸市と笠間市の墳 にあるアサポウ(朝房、浅房) 山の昔の名といわれる。 これは、クレフシの山につ いて昔のことをよく知ってい る老人の話である。 この山にヌカピコという兄 とヌカビメという妹が伸よく 住んでいた。ヌカビメのとこ ろに、夜になると通ってくる I 神さまにまつわる話⑥ へぴ クレフシの山(朝房山)の蛇、 痴轟轟 文.今 瀬 義 次さん 男がいた。その男は夜ごと通 って、ヌカビメはやがておな かに子どもをもつにいたった。 出産の時、生まれ出たのは小 さな蛇だった。ヌカピコもヌ カビメも、「この子は不思議 な子だ。神様の子にちがいな いゾと思った。神様の子をそ まつにできないので、ツキと いう食べものを盛るいれもの に入れておいた。翌朝、それ を見に行ってまた驚いてしま った。一夜のうちに大きく育 ち、ツキ一ばいになってしま った。ツキでは入りきれない ので、ミカ(かめ)に移した。 ′rl ところが、その神の子の蛇は どんどんと育ち、また満ちて しまうという成長のはやさ。 とうとう養いきれなくなって しまった。 母のヌカビメは、わが子で もある蛇に、「お前は本当に 神の子であることを知りまし た。わが家でこれ以上養うこ とはできないからおとうさん のいます所へ行きなさいゾと 言った。すると蛇は悲しみ泣 き出し、「お母さんのいうこ とに従って、おとうさんのと ころへ行きましょう。でも、 私ひとりで行くのはさみしい です。どうか一人の子どもを 私の従者としてつけてくださ い。お願いですノと母におね だりした。母は、このおねだ りにびっくりし、「私の家に いるのは、私と私の兄のヌカ ピコだけということはお前も 知ってるはずです。無理なお ねだりなどはしてはいけませ んノと言った。 蛇は母の言葉に怒ってしま って、ものも言わずにだまっ てしまった。そして、いよい よ別れの時に、おじに当るヌ ( ふる カヒコを震い殺して天に昇ろ うとした。母は驚き、そばに あったミカをわが子に投げつ けた。そのミカは、わが子で ある蛇に命中した。すると、 神の子でもある蛇は神通力を 失ってしまって、父のところ に昇って行くことができなく なってしまった。 今でもその蛇は、クレフシ 山にとどまっている。その蛇 を神として、その子孫がやし ろをたててお祭りをつづけて いる。 (主に「常陸国風土記」より) を刈る穂の手ごた、妄母 に言ふ 加 藤 鉦 好 胸元にきて秋の蚊と気付きけ り 鈴 木 きよし はぎ 萩の風新らしき本めくりけり 鯉 渕 争弥空の急にひろび 飯 村 列 毎輿紆 他に花びら隙 ゆず 出棺のあとの柚子の木かがや けり いそペ き よ 隊都の暗長束響きけり 阿久津 あい子 賢列の影の濃くなる酢高 橋 声 江 秋の声大き赤松てらてらす 長 須 きみの きぬかつぎ ぎーじ▲ 衣被母は童女となりにけり 今 瀬 多代美 炊きたての新米母の匂ひけり 小田木 梅 こほろぎの鳴き場所さがす庭 の闇 蒙 木 女江子 あわだちぐんぐんと雲変りけり泡立草 瀬 谷 博 子 飯 嶋 閉 ろ と な 愛稲は寿 し 架ぎ美 み 子 の 恵 広報じょうほ<

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