広報じょうほく No.363 1992(平成4)年 7月
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は十数年の刑、そして女子高 校生のコンクリート詰めのご どき、絶対許すことのできな い犯行です。そして、これま た求刑は、わずか十数年の刑、 我々の常識では考えられない 甘さです。これでは被害者も 浮かばれないでしょうし、残 された家族の胸中はどうでし ょ、ブ0 この様な残虐きわまる行為 は、元をただせば、戦後子ど もの頃、家庭が誤って培った 「三つ子の魂百まで」の実現 ではないでしょうか。そのう ち、地球が逆回転をはじめる のではないかと心配になって きます。 これら多くのいまわしい出 来事の原因は何か。それは戦 後、家族制度の崩壊にあるの です。戦後急激に増加した犯 罪、非行の数々、いずれも家 族制度の崩壊が原因している のです。敗戦の結果、マッカ ーサーの命令によって完全に・ 解体された家族制度。その結 果、一家は柾散し、未成熟核 が次々に分離離脱し、巷には びこり、悪の分子を結集する 結果、両親の生活さえ危ぶま れる時代となりました。 この家族制度の崩壊、この ことについて奇しくも、過日 町高ク連の幹部研修会に、講 師として来られた桜井先生と 意見が一致し、私も意を強く した次第です。すなわち、先 生は「日本の家族制度は、マ ッカーサーによって根本から 破壊され、主人という家の中 心を失った結果」といいます。 正に同感です。 戦前は、両親の膝下に、親 子、兄弟、姉妹そろって順調 に生活し、そして成熟核に成 長しました。 しかし、義務は果たさない。 このような、いわゆる自分勝 手主義では、せの中は成り立 ちません。 日本の戦力に散々手をやい たマッカーサーは、日本の強 さの源は強固な家族制度にあ ると考えたのです。そこで、 この解体を強行したのでした。 しかし、日本人としての魂 が少しでも残っていたならば、 このような事で動揺すること もなかったろうが、戦争でそ れぞれの生活にも困窮し、そ の上、惰民政策にひっかかり、 歓楽の巷に明け暮れ、遂には 日本人と札ての誇りも忘れ、 惰民に変化してしまったので す。これらの人たちには、も ちろん、お父さん、お母さん という、愛情あふれる温い言 葉など無く育ち、猫も杓子も パパ、ママ時代となったでは ありませんか。まるでマッカ ーサーに媚びる様に……。 もちろん、これは本人の意 志からではなく、そうさせた 一部の父母の責任であって、 これら両親は、この様に呼ば せることによって、満足感に 浸っているのです。 パパ、ママ、何という殺風 景な、そして上調子な冷たい 言葉でしょう。小学校の音楽 にしろその通りでしょう。昔 の小学唱歌には夢と希望があ りました。しかし現在はどう でしょう。私は、小学校で、 どの様な音楽を教えているの か知りません。しかし、恐ら く子供達に夢や希望を持たせ る様な音楽には、およそほど 遠い事には大体想像がつきま す。その証拠には、音楽を口 ずさむ子供達に合ったことが ありません。以前は寓昏の小 路を、そして、お使いの帰り 等、「空にさえずる鳥の声…」 などと、声高らかに歌って、 楽しそうに帰ったものでした。 いかにも楽しそうに。夢のな い生活、これは砂ばくの中の 生活といってもよいでしょう。 文部省唱歌「故郷の空」に 夕空晴れて秋風吹き 月影落ちて鈴虫鳴く 思えば達し故郷の空 ああわが父母いかにおわす 温い家庭に生育し、一人の 社会人として外に出た時、そ して勉学の旅に出た時など、 長い間雇食を共に生活してき た温かい家族を思い、独りぼ っちの生活に、いわゆる郷愁 が虜き、現在のやるせない気 持ちを、この殺風景な部屋に 一人淋しくすごすとき、心の 底から出てくるこの歌、真の 汚れない人としての尊い気持 ちでしょう。しかし、現在の 青少年達に、郷愁などという 気持ちが、果してあるでしょ うか。異郷に在って遠い家族 を思い、その安否を気づかう その心根、核家族に生育した 現在の人たちには、到底昧う ことのできをい尊い心でしょ うC 更に 澄み行く秋萩垂れ 玉なす露は苦に満つ 思えば似たり故郷の野辺 はら・か■.つ ああわが兄弟唯と遊ぶ 一番といい、二番といい、 ちょっと考えれば、めめしい 様にも思われるこの歌、しか し、心の奥にひそむものは、 強固な心情で連結されている のです。異郷に在って、兄弟 姉妹を思うその心情、ただ涙 あるのみでしょう。 私もかつて上京して、一人淋 しく研究室の片隅で、この歌 を思い出して口ずさみ、故郷 に残した弟を思い出し、自分 がいない後、だれと何をして 遊んでいるだろうかなどと余 計な考えをし、故郷恋しさに 幾度か涙したことがあります。 現在の分裂家族に在っては どの様に受けとめるでしょう。 戦前の事を言うと、古いとい う言葉が即座に跳ね返ってき 広報じようほ<
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