広報じょうほく No.359 1992(平成4)年 3月
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つきさばく 月の沙漢 醐摘 大正12年『少女倶楽部』3 月号に、作詞者の加藤まさを 古しえ 自身が描いた挿絵とともに、 「月の沙漠」は発表されまし た。 この歌のモデル、またはヒ ントとなったのは、千葉の御 宿とも、加藤まさをが幼年期 を過ごした静岡の藤枝辺りと もいわれていますが、詩の内 容を具体的に描いた挿絵の視 覚的な印象む加わり、当時の 子 どもたちに、この歌が配 加 藤 まさを 佐々木 すぐる なインパクト(衝撃)を与え むずかし たことは想像するに難くあり ません。 ところで、歌のなかには、 詞に地名や具体的な風土の刻 印があることによって、思い が一層強く呼び起こされるも のがあります。 しかし一方では、どこにで もあるような、あるいはどこ にもないような世界を表現す ることによって、より強く訴 えかけてくる曲もあると思い ます。 ロマンあふれる「月の沙漠」 は、まさにそのような歌では ないでしょうか。 叙情画家であり、かつ文学 や音楽にも多才なところをみ せた加藤まさをの芸術的感性 が、ひと際見事に発揮された 作品といえるでしょう。 歌謡味のある叙情性豊かな 旋律は、高い音域で朗々と歌 い上げられ、わたしたちをフ ァンタジー広がる世界へと誘 います。 短い付点のリズムと長い音 符との組み合わせは、らくだ のゆっくりとした歩みを、か つ寂しげな様子をより切実と 感じさせてくれます。 心素直だった子どものころ を、懐かしく思い起こさせて くれる童謡です。 佐野 清 (東京芸術大学助教授) うことで、地元の人が供養の ために、その小枝で風呂をわ かし、旅の人にまで振る舞っ たというのです。 奥州外ケ浜にこの風習があ ったとされています。外ケ浜 とは、青森市から陸奥湾の西 側の津軽半島を海沿いに北上 し、青函トンネル本州側の入 口で、「青函トンネル記念館」 のある竜飛崎辺りまでの地域 のことです。 ′…生 息穿雇 俳句の春の季語の一つです。 旅の途中で死んだ雁を供養す るために、海岸で風呂をわか すという風習のようです。 秋に北国から渡ってきた雁 が、海上で羽を休めるために、 くわえてきた小枝を海岸まで きて捨て、そして、春に また北へ向かって旅立つ ときに、その枝を拾って いくといいます。雁が去 ったあとに小枝が取り残 されているのは、途中で 死んだり捕えられたりし た哀れな雁のものだとい 出しです。ドライバーも 歩行者も、交通ルールとマナ ーを守りましょう。 でも、いまこの辺りでは雁 風呂の習慣はなく、雁が落と した小枝を見ることもない、 〝ロマンチックな文芸伝説〞 (青森県百科事典) のようで す。それにしても、雁の長い 旅の厳しさがしのばれる話で す。一方、わたしたちも春に なると活動が活発になり、交 通事故が心配です。4月6〜 15日まで、恒例の「春の 全国交通安全運動」が行 われます。 今年の重点目標は、シ ートベルト着用の徹底、 高齢者と子どもの交通事 故防止、違法駐車の締め 5 広報じょうほ<
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